タータンの基本形と種類、バリエーション

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Sunny Sea

この記事ではタータンの基本形である「セット」をはじめ、タータンの種類やバリエーションについて紹介しています。

テキスタイルとしてのタータンの基本

「タータン」は、さまざまな色彩が等しい割合で格子柄になるよう織られたものですが、タータンには織物と柄の2つの意味があります。

織物としてのタータンの要件は、

 ①ウール(羊の毛)
 ②綾織
 ③上下左右対称の格子柄

が基本となります。

またスコットランド・タータン登記所によれば

・2色以上の色を使い、それぞれの糸が直角に交わる格子柄であること
・たて糸とよこ糸に使う糸の色と数が同じで、基本パターン(セット)が繰り返されること
(原則として、模様は上下左右対称になります)

とされています。

セット(sette)とは
タータンを織るための四角形の基本パターン。糸の色と本数で表されます

このセットを縦と横に繰り返し織っていくことでタータンの布地ができあがります。
また、セットは固定のものではなく、単に各色の割合の記録であり、用途によって拡大・縮小が可能です。
例えば、伝統的なキルトやスカート、ズボンでは通常10-15cmのセットが使われ、子ども服では2-3cmのセットに縮小されたものが使われます。

キルト(kilt)とは
もともとはハイランドの男性が着るもので、18世紀にベルトを付けたブラッドを改良し、ひだを付けたスカート部分だけを切り離したもの。

ハイランドの軍隊の男性が着用したため、軍隊の制服の一部となりました。
女性用は「キルトスカート」として区別されます。

タータンの種類

タータンにはスコットランドの各地域や一族によって異なるパターンが存在し、それぞれに独自の成り立ちがあり、その目的や用途によっていくつかの種類に分類されます。

地域に関連した「ディストリクト・タータン」、クラン(氏族)とその家族が身につけられる「クラン・タータン」、軍隊用の「ミリタリー・タータン」、王室が用いてきた「ロイヤル・タータン」、組織や企業が作成した「コーポレート・タータン」、ダンス競技用の「ダンス・タータン」です。

ディストリクト・タータン

「ディストリクト・タータン」は、ディストリクト(地域)という名称のとおり、地理的に特定できる場所と関連したタータンです。

初期のハイランドでは、家内工業でタータンの製造をおこなっていましたが、最も美しいタータンを作った職工が関わった地域では、多くの人が人気のあるタータンを身につけました。

このようにして「ディストリクト・タータン」が生まれたことから、タータンによりその地域を特定できるようになりました。

たくさんのスコットランド人が世界各地に移り住み、移民先ではその発展に大きく貢献しました。
その貢献を表すために多くのディストリクト・タータンが作られました。

たとえば、カナダでは州および準州にそれぞれ固有のタータンがあります。
また、米国では30以上の州に固有のタータンがあり、米国内のタータン数は1,000を数えています。
アイルランドでは1997年に32の行政区すべてに固有のタータンが作成されました。

例)「ニューヨーク シティ」

New York City

2002年4月6日のタータンデーを祝うためにデザインされました。
色はニューヨークの通りと建物を表しており、緑はセントラル パーク、青はマンハッタンを囲む川 (ハドソン川、ハーレム川、イースト川) を表し、2 本の黒のストライプは 2015 年に破壊されたワールド トレード センターのツイン タワーの記憶をたたえています。

クラン・タータン

「クラン」とはゲール語で家族や子孫を意味し、氏族・一族などと訳され、血縁や地域的な結びつきにより独自の社会を形成していました。

そして「クラン・タータン」は、クランごとに異なるパターンと色で織られた伝統的なタータン織物であり、戦闘や行事で着用するための服装として使用されてきました。

かつてタータンの製造はほとんどが家内工業で、ハイランドの人里離れた土地で行われていました。

最初、地元の人々が好んで着用したタータンと地名が結びつき、しだいにその地に住むクランと関連付けられるようになりました。

そのためクラン・タータンの多くは、このようなディストリクト・タータンから発展したものと考えられています。

現在、スコットランドには約250のクランと約530のクラン・タータンが存在しています。

例)「ブキャナン-1850」

Buchanan

スコットランドのロモンド湖のほとりにあるスターリンシャー地区の氏族、ブキャナン家のタータン。
ハイランドの南部地方を約700年の間治めていました。

ミリタリー・タータン

「ミリタリー・タータン」は軍隊用のタータンです。

ハイランドでタータンが禁止された35年間においても、政府軍として戦うスコットランド連隊では軍服としてハイランド衣装の着用が認めれました。
これによりタータンは生き残り、世界的に人気を得ることとなりました。

例)「ブラック・ウォッチ」

Black Watch

18世紀にスコットランド高地連隊(Black Watch)の制服に採用されたタータン。
現在でも、軍事関係者や民間人の間で人気があります。

ロイヤル・タータン

「ロイヤル・タータン」はスコットランドの伝統的なタータンをベースにデザインされており、基本的には特定のクランや地域を象徴する柄が使用されます。

1822年、ジョージ4世のスコットランド訪問時にはじめてロイヤル・タータンが作られて以来、スコットランド王室のシンボルとして王室の式典や行事などで使用されています。

例)「ロイヤル・スチュアート」

Stewart Royal

現在もスコットランド王室の公式タータンとして使用されており、世界で最も知られているタータンです。
15世紀にスチュワート朝の王族であるジェームズ1世が定着させたもので、後にスチュワート朝の王室カラーとなりました。

例)「スチュアート・オールド」

Stewart Old

英国王室の人々がスコットランド滞在中、非公式の場でよく身につけています。

例)「ハンティング・スチュワート」

Stewart Hunting

16世紀にスチュワート朝の国王ジェームズ4世が狩猟用の衣装として着用したことが起源とされるタータンです。
現在では狩猟用の衣服やアウトドア用品などにも使われます。

コーポレート・タータン

「コーポレート・タータン」は、組織が制服や販売促進、帰属意識の強化などの目的で使用するタータンです。

現在、多くの企業や機関、非営利団体が自社の製品やサービスをブランディングするためのツールとしてタータンを使用しており、その数は世界各国で1,700以上になります。

ダンス・タータン

伝統的な「スコティシュ・カントリー・ダンス」、「スコティシュ・ハイランド・ダンス」は世界各国で絶大な人気があります。

ハイランド・ダンスの競技会に出場するダンサーたちは必ず、人目をひくタータンとそれに合うタイツ(ロング・ストッキング)を身につけます。

例)エルサ・ピンク

Ailsa Pink

ハウス オブ エドガーのためにカースティ アンダーソンがデザインした一連のダンサーのタータンの 1 つです。

※ この項目でご紹介のタータン画像はスコットランドタータン登記所より引用しています。

タータンのバリエーション

ほとんどのタータンには、用途に合わせて色調やセットの比率を変えることで、いくつかのバリエーションがあります。

1.ハンティング(hunting)

狩猟など戸外での活動用に、自然に同化する色調や暗めの色で作られたタータン

2.ドレス(dress)

”正装”として身につけられる、白を基調とした女性用タータン

3.モダン(modern)

化学合成染料の発明によって可能になった、鮮やかで濃い色合いのタータン

4.エンシェントまたはオールド(ancient、old)

化学合成染料ではなく、天然染料を使用した優しい色合いのタータン

5.ミューテッド(muted、weathered)

ぼやけた色合い、くすんだ色合いのタータン

6.リプロダクション(reproduction)

年月を経て変化したタータンの色を”模した”色合いのタータン

参考文献:「タータン 伝統と革新のデザイン」 青幻社発刊 ほか

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